月岡芳年 和漢百物語(2)「清姫」浮世絵 買取させて頂きました 山梨市より

「和漢百物語」は日本と中国の妖怪話や奇譚を題材にした芳年初期の代表作です。

芳年27歳、慶応元年(1865)の発行で師・歌川国芳から継承した勇壮な武者絵の表現に加え、歴史画に学んだ独自のアプローチも盛り込まれています。のちに流行を博した「ちみどろ絵」へと繋がる残酷描写も見られ、芳年作品の醍醐味を味わえるシリーズとなっています。

「和漢百物語」は全26図からなりますが、今回買取させて頂いたのはそのうちの12図。数回に分けてそれぞれの作品を見ていきたいと思います。


紀州(和歌山)道成寺に伝わる、安珍清姫伝説を題材にとったものです。
時は後醍醐天皇の治世時代(930年頃)に遡ります。安珍という美形の僧が熊野詣でに訪れます。安珍は熊野街道沿いに宿を借りますが、そこにいたのが清姫という娘でした。清姫は安珍に一目惚れし猛烈にアタックしますが、仏門に帰依した身である安珍は困りながら断り、帰りにはまた立ち寄るから、となだめたそうです。しかし安珍は結局清姫のもとを立ち寄ることはありませんでした。騙されたことを知った清姫は激怒し、身なりも構わず裸足で追いかけます。途中で再会するも安珍は取り合ってくれず、逆に熊野権現の霊力で清姫を金縛りに合わせるなどしてしまいます。ついに清姫は悲しみと怒りのあまり蛇に化けてしまいます。日高川を越えて安珍は道成寺の鐘に身を隠すも清姫はその鐘もろとも安珍を焼き殺してしまったそうです。

本作は蛇となった清姫が川から上がってきた場面で、凄まじい執念と怒りを滲ませた清姫の鬼気迫る姿が大変印象的です。水に濡れたしどけない姿の清姫には女の情念が滲んでおり、悲しくも妖艶な美しさが醸し出されています。

<詞書>
『清姫ハ恋慕にあまり安珍をいづく迄もと追かけしにはや日高川をも打越たり此方の岸にハ船なけれバ清姫心いらだちて川へざんぶと飛入バ其半身は蛇躰と変じなんなく河を泳越せし嫉妬の念こそ恐ろしけれ』

約37cm *25cm
裏打、欠損、シミあり
売切


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