秦テルヲ 「月下人物図」

本作品は晩年に描かれたもの。「昭和聖戦紀念　テルヲ作」の落款が入っている。

秦テルヲは日本画家としては異様な作風で、しばしば異端の画家とも評される。
しかし実はそういう日本画とか時代とかを超越している画家で、その表現はより普遍的な芸術としての力を持っているように思う。
聖と俗の狭間で引き裂かれる人間の業に、真摯に向き合い祈るようにひたすら筆を走らせた秦テルヲ。

強烈な表現、そしてその背後の敬虔な魂といったものに魅了され、虜になってしまう人は少なくない。
しかしまだまだ知名度は低いように思える。もっと多くの人に評価されて欲しいです。

晩年、なくなるまでの5年間は病床に伏せることが多かったというが、戦時の空気のもとで力を振り絞るかのように描かれた作品がのこされている。

秦テルヲ
1887〜1945 / 明治20年〜昭和25年
大正から昭和にかけて、京都で活躍した日本画家。社会の最底辺で身を売る女たちなど、世の中の暗部を描き出すかのような、退廃的な作品で知られる。1920年頃からは家族を得たことを転機として、仏教研究に没頭。以後は光明を求めて仏教的題材の作品を多く手がけた。

Teruo Hada (1887〜1945)
Japanese painter and graphic artist. In his works, he attempted to synthesize the Japanese painting and Buddhism art styles. Many of his later works have Buddhist themes.